コンクリートの中性化について
・中性化の概略
コンクリートの中性化とは、空気中の二酸化炭素によって中和され、コンクリートのアルカリ性が低下していく現象を言う。
コンクリートはもともとpH値12〜13の強アルカリ性である。それによって、鉄筋コンクリート中の鉄筋の表面には不動態皮膜と呼ばれる厚さ約3nmの緻密な酸化皮膜(γ―Fe2O3・nH2O)が作られ、酸化から保護される。しかし、中性化が進み鉄筋周辺のpH値がおよそ11.5を下回ると、不動態皮膜が破壊され、鉄筋は腐食し始める。そして、鉄筋の周囲には固いさびが生じ、もとの体積の2.5倍に膨れ上がり、鉄筋周辺のコンクリートを圧迫して、コンクリートにひび割れを起こすに至る。この中性化の進行具合によって鉄筋コンクリートの寿命が左右され、中性化を防ぐには二酸化炭素を完全に遮断するしかない。鉄筋コンクリートの寿命が数十年と言われているのはここに原因がある。
しかし、近年問題になっている山陽新幹線のトンネル崩落事故などは海砂の使用による鉄筋の激しい腐食とアルカリ骨材反応が原因と言える。日本では中国・四国地方から以西では、コンクリート材料として使用される砂の採取は、海砂がほとんどその割合を占める。海砂は多量の塩分を含んでおり、塩抜きを怠るとコンクリート中に塩化物イオンを発生させ、コンクリートの中性化に関わらず鉄筋をコンクリート内部から腐食させてしまう。つまり、コンクリート表面付近の鉄筋のみならず、さらに内部の鉄筋まで腐食をさせるため、気づかないうちに鉄筋コンクリート自体の強度が大幅に減少することとなる。
また、塩分によってコンクリート内部では、水酸化ナトリウム基イオン量が上昇し、シリカ分を含む岩石が強アルカリによって溶け出し、骨材としての機能を果たさなくなり、コンクリートが崩壊してしまうと言う現象も引き起こされる。コンクリートはもともと強アルカリ性であるので、シリカ分を多く含む骨材が利用されれば、アルカリ骨材反応は多かれ少なかれ生じてしまうものだが、塩分がそれに拍車をかけていることは言うまでもない。
このようにみていくと、鉄筋コンクリートは非常に不安定な建築材料のように思われるが、JR内房線の山生橋梁などは1924年に完成し、潮風にさらされながらも、建設当時の状態を保っている。それを考えると、上記のようなコンクリートの問題が浮上するのは、建設技術の低下と手抜き工事が招いたものと言えるであろう。
・中性化が起こる原理
健全なコンクリートはセメントから遊離された「消石灰」(消石灰と言う名称は通称で、正式には水酸化カルシウム(Ca(OH)2である)を多量に含むため、一般にPHは12〜13という強アルカリ性である。
アルカリ性であるということは、OH-(水酸化物イオン、アルカリ性を示す物質)量が、H+(水素イオン、酸性を示す物質)量に比べて多量に存在しているという状態である。
中性化とは、アルカリ分が何らかの理由によって消失(減少)し、水素イオン量が増えていく現象のことを指し、中性とはPHが9程度まで下がった状態をいう。
コンクリート構造物は中性化しているうちは強度を保っているが、これを通り越して酸性になると強度を失い崩壊してしまう。なお、中性化によってコンクリートが強度を失い、崩壊する事はありえない。(コンクリートが中性化した結果、何らかの不都合が生じる事はありえる。)
・何故中性化が良くないのか(何故アルカリ性に回復する必要があるのか)
コンクリートが中性化しても強度を失うことがないのは前に述べた通りであるが、中性化が良くない理由は、中性化することによってOH-が減少してしまうためである。
鉄筋は、健全な(中性化していない)コンクリート中ではOH-が多量に存在しているために錆が発生する事はない。しかしながら、OH-が減少するとCl-(塩素イオン)が不動態被膜(新しい鉄筋の表面についている青黒い被膜)を破壊し、鉄筋の錆が発生する。
なお現場によっては、既に赤く錆びた鉄筋を使用してコンクリートを打設している。鉄筋が赤く錆びていると言う事は、その部分の不動態被膜は既に失われていることになるが、コンクリートの強アルカリにより失われた不動態被膜が再生されるために問題は発生しない。
また、中性化しても問題にならないケースがある。これは鉄筋の入っていない無筋コンクリートの場合である。
・コンクリートが中性化する要因
コンクリートが中性化する主たる原因は、大気中に存在する炭酸ガスによるものである。炭酸ガスはコンクリート中の余剰水の中に溶け込み、炭酸(H2CO3)となる。これがH+の供給源となり、中性化が進行する(H+とOH-が結合(中和)される事により水(H2O)を生成する)。この他にも外部から供給される酸性物質、例えば酸性雨(NOx、SOxの水和物)などによっても中性化は促進される。これらのことをまとめると以下のようになる。
Ca(OH)2 ⇔ Ca2++2OH-
健全なコンクリートは多量のOH-によってアルカリ性を示す。
CO2+H2O ⇔ H2CO3 ⇔ H++HCO3- ⇔ 2H++CO32-
大気中の二酸化炭素がコンクリート中の余剰水の中に溶けて(加水)分解し、H+を供給する。
OH-+H+ ⇔ H2O
OH-とH+が(中和)反応して水を形成する。これによりOH-が減少し、コンクリー トは中性化する。(アルカリ性でなくなる)
中性化の調査方法
フェノールフタレイン溶液に浸して調べる。
○ 色が赤く変われば正常
× 色が変わらなければ、中性化
(炭酸ガスによる中性化 PH>10 → 鉄筋が腐食する → 膨張してコンクリートにひび割れが生じる )
コンクリートの中性化はコンクリートの耐久性に大きな影響を及ぼす、鉄筋の腐食の関係があり、中性化を測定することによりコンクリートのアルカリ度の現象度合をみます。
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コンクリート中性化調査 |
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測定使用溶液:フェノールフタレイン 1%エタノール溶液 |
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中性化速度式
大気中の炭酸ガスによるコンクリート表面からの中性化の進行を、経過時間の関数として表したものを中性化速度式という。中性化が定常状態での炭酸ガスのコンクリート中への拡散によって生じると仮定すると、中性化深さCは経過時間tの平方根に比例するという式が導かれる。これは通常ルートt則と呼ばれ、最も一般的に用いられている。
ここで C :中性化深さ A :中性化速度係数 t :時間 とする。
係数Aは、中性化速度係数とも呼ばれるもので、Aの値が大きいほど中性化速度が大きいことを意味し、Aは、先に述べたような多くの外的および内的要因によって定まる複雑な関数である。我が国では、古くから中性化速度式についての研究がなされており既存コンクリート構造物の実態調査、供試体の暴露試験や促進中性化試験などの結果、または、理論的考察に基づいて種々の中性化速度式が提案されている。
中性化速度に影響を及ぼす原因
一般大気中における中性化速度は、環境条件(大気中の炭酸ガス濃度、温度、湿度、仕上げ材など)を主とする外的要因、およびコンクリート自体の性能・品質(透気性、含水率、強度、セメントの種類、調合条件、施工条件など)を主とする内的要因によって複雑な影響を受ける。
・その他のコンクリート劣化の要因
@ 塩 害
・塩害とはなにか
塩害とは、コンクリート中の鉄筋が、Cl-(塩素イオン)が原因となって錆びる、または錆びて体積膨張をおこした結果、コンクリートを押し割っているような状態のことをいう。Cl-の供給源としては、海砂の使用等によりコンクリート打設時に既に入っている場合と、構造物の表面から内部に侵入してくるもの(特に沿岸部の構造物に見られる現象)の2通りがある。
・鉄筋が錆びる原理
塩分(Cl-)は、鉄筋表面にできている不動態被膜を破壊する作用があると考えられる。一方、アルカリ性を示す物質であるOH-は、不動態被膜を再生する機能がある。コンクリートは前述の通り健全であれば強アルカリを示す物質である。健全なコンクリート中では鉄筋は錆びないといわれる所以はこのためである。
しかしながらコンクリート中ではCl-/OH+≦0.6(Cl-が過少であったりOH+が過大であったりしても問題はない)であれば鉄筋は錆びないという報告がある。よって、中性化しても一概に問題になるとは限らないし、塩素イオン量が多いからといっても鉄筋が錆びるとは限らない。
➁ アルカリ骨材反応
・アルカリ骨材反応とはなにか
アルカリ骨材反応とは、コンクリートに含まれている骨材(粗骨材・細骨材)とセメント中に含まれているアルカリ金属イオン(主にNa+(ナトリウムイオン)、K+(カリウムイオン))とが反応し、そこに水が入って膨張する(コンクリートを押し割る)現象のことをいう。アルカリ骨材反応は、全ての種類の骨材において反応が発生するのではなく、ある種(輝石安山岩系など)の反応性骨材が混入していると起こる現象である。アルカリ骨材反応の「アルカリ」とは、アルカリ金属のことを指し、アルカリ性を示す物質(OH-)のことではないので注意を要する。
この現象は関西から西の地方で多く見受けられるが、近年では反応性骨材が規制対象となっているために、新築に関してはあまり問題となっていない。
・アルカリ骨材反応が起こる条件
反応性骨材が混入していればアルカリ骨材反応は必ず起こるが、混入割合によってそれが害になる場合とならない場合とがある。例えば、反応性骨材の量が多すぎると、反応膨張によってコンクリートを押し割るが、少ない場合はコンクリートの拘束力が骨材の膨張力よりも勝るためにほとんど影響は起きない。
また、反応性骨材とアルカリ金属イオンが反応しても、水が存在しなければ膨張して害になることはない。
B 化学的劣化
・化学的劣化とは何か
コンクリートのセメント分が化学反応を起こして劣化する現象をいう。一般には特殊条件に置かれているコンクリートに起こる。
・酸による劣化
コンクリートは前述したように強アルカリを示す物質である。コンクリート表面と酸性物質が接触した場合、その部分で中和反応が起こる。中性化の場合には炭酸のような非常に弱い酸性物質である(遊離消石灰を中和する機能はあるが、セメント硬化体を破壊する機能まではない)ため、コンクリートを表面から徐々に中性化し内部に向かって中和反応が進んでいく。
また強酸と接触した場合には遊離消石灰を中和するだけにとどまらず、セメント硬化体自身を中和して破壊してしまう。これが酸による劣化で、表面からやせ細っていくのが特徴である。
温泉地帯や食品工場(酸を使わない食品工場でも、食品の腐敗の過程で生成する乳酸により劣化する)にみられる現象である。
・動植物油による劣化
この劣化には大きく分けて2種類の劣化がある。ひとつは動植物油から遊離される酸によるものであるが、この劣化過程は上記したものと同様である。
もう一方は、コンクリート中の遊離消石灰と反応して、膨張、破壊するものである。この劣化の特徴は劣化の初期には何も外観上の変化はおきないが、内部で膨張、コンクリートを破壊する事にある。ただし、食品工場のように毎日洗浄が行なわれるようなところでは、内部に油脂が到達する前に表面が削り取られてしまうために、酸と同じような劣化状況を呈することがある。
・SO42-(硫酸イオン)による劣化
コンクリートの硬化体中には、3CaO・Al2O3(アルミン酸3カルシウム、通称C3A)が存在するが、ここにSO42-(硫酸イオン)が供給されると、3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O(通称エトリンガイド)を生成する。このエトリンガイドの膨張によりコンクリート内部から破壊されるのが、SO42-(硫酸イオン)による劣化である。
温泉地帯や下水道の管渠などに見受けられる。なお、下水道の管渠などは、酸とSO42-の複合した劣化現象が多々見受けられる。
C 凍 害
凍害とは、コンクリート中の毛細管や内部に存在する空洞等に水が侵入し、その水が凍結することにより体積膨張をおこしコンクリートを押し割ってしまう現象をいう。これは寒冷地における建造物でコンクリート表面を防水被覆していない場合によく見受けられる。
D 乾燥収縮(新築時でも発生するひび割れ現象)
コンクリートは作業性向上のため、セメントの硬化に必要な量以上の水で混練りしている。このためコンクリートが乾燥する際に体積減少(収縮)を起こし、ひび割れが発生する。
この現象は、収縮による負荷がコンクリートのもつ引張り強度を上回った場合に発生する。建築物の開口部の四隅に斜めに発生するひび割れや、誘発目地に発生したひび割れなどがある。
E 火 災
・高温の状態での劣化
火災時は高温となるため、セメント水和物の脱水反応や熱応力が局部的にかかるためコンクリート表面の剥離がおこる。コンクリート全体を徐々に温めていけば耐えられる温度であっても、局部的に急激に熱がかかると表面が弾け飛ぶ。
・中性化の進行
火災時にはコンクリートが高温となるため、劣化現象も極めて短時間のうちに進行する。火災によって高濃度で多量の二酸化炭素が供給されるため、中性化の進行もきわめて早い。
F 熱膨張ひび割れ
・硬化熱によるひび割れ
セメントが硬化する場合、水和反応熱を発する。躯体が厚いほど熱の発散効率が悪く、内部温度が上昇してコンクリートが膨張する。
そのため収縮が大きくなって、大きな貫通ひび割れを起こす。
・太陽熱によるひび割れ
完成した建物に直射日光を長時間受け続ける、日当たりのよい建物に見受けられる現象で、一定方向(南、南西方向の面)の壁面温度が高くなり、コンクリートが膨張する。この場合、対地方向は拘束されているにもかかわらず、左右は開放されているために中央方向に向かって逆八の字の斜めひび割れが発生する。ほぼ画一的に多数発生するのが特徴で、大規模建築物によく見られる。
G 磨 耗
磨耗には大きく分けて2つの磨耗がある。一つは水路のような場合で、セメント質の部分が摩擦により削り取られ、骨材を支えきれなくなり、やがて骨材がはずれるパターンの磨耗である。もう一つは、衝撃が加わることによって割れて消失するという磨耗である。
H 疲 労 (クリープ現象)
疲労はコンクリート建造物のうち橋梁などのように、もとからたわむ事を計算して設計された構造物に多くみられる。
I 経年劣化
特にモルタルやタイルの浮きなどの2種類以上のものの界面剥離という形でおこる(熱による劣化の一種)。経年劣化というと竣工後何年もたっているのだから、いろいろなところに不具合が出てきている(出てきても仕方がない)ことの総称的な名目で使われていることも多々ある。
特に劣化を促進する予想外の条件がないような場合で、通常の使用により劣化した場合の表現方法、またはその材料の寿命ということもできる。